議会運営委員会行政視察結果報告書
更新日:2013年7月19日
1.実施日
平成21年10月13日(火曜)から10月14日(水曜)
2.視察地
(1) 福島県須賀川市
(2) 福島県会津若松市
3.目的
(1) 須賀川市:「議会改革調査特別委員会」設置について
(2) 会津若松市:議会基本条例及び議員政治倫理条例について
4.出席者
山川昌子(委員長)、肥沼茂男(副委員長)、佐藤真和、北久保眞道
島田久仁、熊木敏己、駒崎高行、田中富造、清沢謙治
川上隆之(議長)、鈴木忠文(副議長)
随行:田中憲太議会事務局長
5.視察結果報告
【1】須賀川市
(1)須賀川市の概要
須賀川市は福島県のほぼ中央に位置し、市内中心部を阿武隈川と釈迦堂川がゆったりと流れる自然環境に恵まれたまちである。
旧石器時代の遺跡をはじめ、奈良・平安時代の国指定史跡が残され、東北地方の要衝として栄えて来た。江戸時代には奥州街道の宿場町としても栄え、松尾芭蕉は「奥の細道」の旅で須賀川宿に8日間滞在をしている。
平成17年4月に長沼町、岩瀬村との合併により、新しい市となった。
県内唯一の空の玄関口「福島空港」を有し、東北縦貫自動車道・国道4号線・東北新幹線など高速交通網の整備により、人・物・情報などの交流が活発化し、新たな文化を生み出し、県内随一の人口増加率である。
須賀川市では「市民のしあわせ」実現のため、人と自然が温かく触れ合う豊かなまちづくりを積極的に進めている。
人口 79,685人 (男:38,885人 女:40,800人 )
世帯数 25,848世帯
面積 279.55キロ平方メートル
議員数 28人
(2009年11月1日現在)
(2)視察の目的
東村山市での議会運営にあたり、議会のあり方について各議員からの問題提起があり、また、議会改革について市民からの提案も広範囲に頂いているところである。
当市議会運営委員会では、今後の議会改革研究にあたり、平成19年4月より施行された改正地方自治法を受けて、平成19年6月定例会において議会のあり方や委員会制度などの調査研究を通して議会の改革のために「議会改革調査特別委員会」を設置し、平成20年9月、議長に対し調査報告書を提出した須賀川市の経過と状況を視察した。
(3)視察の概要
<議会改革調査特別委員会の経過>
1)平成19年6月から平成20年9月までの455日間で、12回の委員会を開催し、6件22項目の調査報告書を作成し議長へ提出した。
2)委員会の審査活動方法
(1) 議会改革に資すると思われる課題等について、各会派等での意見聴取。
(2) 課題を抽出し、協議検討を行なう。結論が出たものについては、随時調査報告書を提出。
(3) ブレーンストーミング方式(自由討論方式で意見を出し合い、最終的に課題に対しより良い解決を得る方法)により意見聴取。
3)協議課題項目
(1) 費用弁償に関すること :課題 「議員に対する諸費用の改善」
(2) 政務調査費に関すること:課題 「政務調査費についての検討」
(3) 委員会活動に関すること:課題 「委員会活動の活性化について」「委員会審査のあり方」
(4) 議会制度に関すること :課題 「海外行政調査の必要性の検討」「行政調査の報告書について」「議員研修の制度化」「議会だより編集委員会の位置づけの明確化」
(5) その他 :課題 「議場のバリアフリー化などの施設充実」「事務局の機能強化」
(6) 議会制度に関すること :課題 「議員定数の見直しについて」「委員会数の検討」「議会運営委員会、特別委員会の委員構成のあり方」「議会の附属(補助)機関の設置」「基本計画等に対する市民の意見もふまえた政策提案」「参考人制度の導入について」「協働型議会の制度化」「刑事事件等で議会の名誉を傷つけた議員に対する制裁について」「正副議長の立候補制について」
4)調査報告内容
(1) 費用弁償について :本議会および委員会に出席した際の費用弁償を廃止すること
(2) 政務調査費について:政務調査費の積極的な公開をすること(ホームページ・議会だより等)
(3) 委員会活動について:委員会活動の報告の機会を設けること
(4) 議会だより編集委員会の位置づけについて:新たな常任委員会として設置すること
(5) 議場の改修について 外7件:
a.議場(傍聴席)の改修を行なうこと
b.事務局の機能充実を図るとともに専門的知見の活用に取組む附属機関の設置を検討すること
c.市民の意見をより多く取り入れた議会活動とするために議会広聴活動に対し積極的に取組む検討
d.議員定数の見直しについて時機を見て審議会設置を進める
e.委員会数については議員定数と併せて協議し、所管事項については組み替えについても検討すること
f.議会運営委員会の委員構成については会派に属さない議員も構成委員となる検討を行なうこと
g.議員憲章などにより倫理規定を設けること
h.透明性の高い議長選挙を目指すこと
(6) 協議項目のうち、他の委員会の所管とすべきものについて
a.議会運営に関すること
a)一部事務組合に対しての質問範囲の明確化について
b)一般質問のあり方について
c)会派代表質問について
d)議決事件の拡大について
e)議場における呼名応答の統一について
f)記名投票の導入について
g)市政報告に対する質問について
h)市民に身近な市議会のあり方について
i)専決処分の考え方の見直しについて
b.委員会活動に関すること
a)予算決算特別委員会の審査のあり方について
(4)考察
須賀川市議会においては一市一町一村の合併という大きな激動期を持ちそれぞれの議会から新たな一つの議会に生まれ変わる中、議会改革が育つ環境が整って来たといえる。
東村山市議会の中ではすでに廃止となっている項目も含まれているし、「一般質問の一問一答方式」「1日1委員会」「議会だより編集委員会の位置づけ」など、検討をし進めなくてはならない課題もある。
東村山での議会報(だより)編集委員会は議長の諮問委員会であるが、須賀川市においては常任委員会の位置づけを行い、議会だよりの編集に加え、議会ホームページの監修など議会広報に関することを所管事務としている。「すかがわ市議会だより」は一般質問の内容や議案審査の報告という記事はなく、常任委員会の活動報告、各会派の活動報告、次回定例会のお知らせを掲載するという、告知型を執っている。告知型を執ることが出来る背景には、地元新聞での議会報告等が掲載されるという特有の文化もあるが、委員会・会派の活動を報告する上では一つの取組み方法である。また、調査報告された項目である政務調査費の状況も積極的に情報提供されている。
議会改革調査特別委員会の設置は、各議員間の協議が行なわれること、議会活動についての議論が活性化すること、現下の課題が共有化され、方向性を打ちだせること、が目的であるという。それぞれの市における課題は違うものであると思うが、いかに課題の洗い出しを行なうかがポイントであり、党派・政策を飛び越え、協議し、議論を重ね、課題を解決するという行為こそが議会の改革に繋がるのではないだろうか。
先進市の視察で学ばせていただいたことは、これからの東村山市議会をより良いものに改革するために大変参考となった。
【2】会津若松市
(1)会津若松市の概要
会津若松市は、福島県の西部、会津盆地に位置し東京から300km、県庁所在地である福島市から100kmの距離であり、面積は約383k平方メートル。人口は12万7千人であり、都市形態としては観光都市である。明治32年に若松市として市制施行し、昭和30年の合併を契機に会津若松市と市名を改めた。その後4回にわたり周辺町村と合併をおこない、最新の合併は平成17年11月の河沼郡河東町との合併である。歴史的には、江戸時代には徳川家へ固い忠誠を示し松平姓を名乗ることが許され、幕末には戊辰戦争で親幕側の中心であり、白虎隊の悲劇など大きな動乱期を経ている。そのためか、頑固なまでの素朴さと言われる会津気質が息づいている。経済面では長らく大手電機メーカーの企業城下町として発展してきたが、現今の経済状況で地域経済の疲弊と市財政の厳しさの度を増している。
(2)視察の目的
特徴ある議会改革を直近に実施した会津若松市を視察し、当市でも課題となっている議会改革の参考とするために視察をおこなう。
(3)視察の概要
会津若松市役所において、議会事務局・井島副主幹、本田副議長、目黒総務委員長、木村議員から議会基本条例をツールとした政策形成サイクルの構築・運用・課題を中心に、議会基本条例、議員政治倫理条例の策定の経緯、特徴について説明を受け、その後に質疑応答をおこなった。
(1)議会基本条例、議員政治倫理条例の策定経過について
市長と対等な機関として議会の役割が増大する中で、合議体としての市議会のまとまりが減少するという問題があるため、会津若松市民の特性である活発な議論と民主的な政治風土を活かして、合議体としての一体感を取り戻すために、議会基本条例、議員政治倫理条例を議会改革のツールとして位置付けて策定を目指した。
具体的には、平成17年に女性議員へのセクシャルハラスメント問題を契機として議会の倫理条例への機運が高まった。また同じく平成17年の市の合併によりそれまであたりまえとされていた議会のルールを原因として多少の混乱が起こったことにより、議会のルールを見直す必要性への認識が生じた。議員政治倫理条例の素案は平成18年に完成したが改選を迎えたため、当時の議会から改選後の議会に対して申し送りがなされた。
平成19年5月、選挙後初めての議会において、全ての正副議長候補が倫理条例の制定など議会改革を公約として議長選挙がおこなわれた。
平成19年7月から、検討組織であり、また任意な委員会としての議会制度検討委員会が、議員・公募市民・学識経験者を構成員として設置され、伊賀市議会安本議員らによる先進例を学ぶ講演会の開催、神原勝教授、松野光伸教授を代表とする学者等による学術的なセミナーの開催、市民との意見交換会を活発に開催して条例の起草と検討をおこなった。
その際に留意した点としては、栗山市、伊賀市など議会改革の先進市に学ぶとともに、学術的な成果を取り入れることであった。
また市民との信頼関係が土台として必要であるという考えを強く持ち進めたことである。特に市民との意見交換会では135人の参加があり80の意見を聴取し、その意見を元に素案の修正をおこなった。
なお、議員政治倫理条例の素案検討は議員だけでおこなった。
平成20年6月定例議会において、会津若松市議会基本条例と会津若松市議会議員政治倫理条例を可決し、平成20年6月23日に公布・施行された。
(2) 会津若松市議会基本条例の内容の特色
(2)-1 概要
議会制度検討委員会に市民委員と学識経験者委員を加えたことで、市民参加の意義がより深く理解された結果が前文において反映された内容となった。抜粋すると「市民参加を礎として」、「市民との活発な意見交換を図り」、「市民本位の立場を持って」などの部分である。
政策討論会に代表されるが、市民の意見を後ろ盾にした骨太の合議体として議会を考える。
各派代表者会議の条例化するなど整理をおこない、政策形成サイクルとして、広報広聴委員会、市民との意見交換会、政策討論会を開催する。
(2)-2 政策形成サイクルについて
問題発見、課題設定、問題分析、政策立案、政策決定、政策執行、政策評価を1サイクルと考え、政策評価後は最初の問題発見にループする。市民との意見交換会、広報広聴委員会、政策討論会、議会の本会議と委員会、執行機関の執行、一般質問や決算特別委員会が主におこなわれる場所となる。
市民との意見交換会はこのサイクルの起点、問題発見の場であり、また政策執行後の報告の場として政策評価、そして新たな問題発見の場である。意見の聴取、問題所在の議論、市民としての意思決定などを合わせておこなう。
地区別と分野別の2種類が開催される。地区別は年2回、市会議員を6人毎に班編成し、1つの班が3地区を担当するが、地区を抽選とするなど工夫をしている。
第1回意見交換会は平成20年8月に6月定例議会の報告と議会基本条例の説明・意見交換がおこなわれ、15会場で294人の参加があり215の意見が出された。
第2回意見交換会は平成21年2月に15会場で247人、意見は263であった。
広報広聴委員会は、議員のみで構成された委員会であり、市民からの多様な意見を整理し課題を設定する。
政策討論会は具体的な政策を立案・決定することを主におこなう。
全体会では具体例として「水道事業の民間委託」をテーマとして全体会がおこなわれ、「賛否だけでなく、より望ましい政策水準を目指した議論の展開へ」という形となった。今は、平成21年末に結論を出す予定で「議員活動と議員報酬・議員定数の関連性及びそれらのあり方」といテーマに取り組んでいる。
分科会は4つの常任委員会の下に設置され、勉強会、セミナーの実施をおこなっている。政策決定、政策執行、政策評価は、それぞれ本会議と委員会、執行機関の執行、一般質問や決算特別委員会が主におこなう。
(2)-3 特色ある条文について
(全文:会津若松市議会基本条例)
会派 第4条「会派を結成するものとする」
30人の合意を目指す議会として条文化した。
広報広聴委員会 第6条
広報編集委員会から任意で参加。市民との意見交換会も所管する。
議決責任等 第8条 「市民に対して説明する責務を有する」
議長選挙の公開などがおこなわれている。
「反問することができる」 第9条
実際に行使されていないが、市長と議会が対等であることを目指すものであって、市長より議会が強くなることを防止するため。
議員間の討議による合意形成 第12条
6月と9月に試行している。賛否を問うのではなく論点による違いを明らかにする。
政策討論会 第13条
全体会、4つの常任委員会の分科会として政策立案、政策提案、政策提言を推進する。
(3) 議員政治倫理条例と議会基本条例の同時検討、提案の考え方
(全文:会津若松市議会議員政治倫理条例)
当初は議会基本条例により議会のあり方を明確にし、その中で議員のあり方である議員政治倫理条例を定めようとしたが、議会基本条例を検討していくなかで、議会基本条例で標榜する市民参加を推進するための前提として、議員が市民から信頼を得る基盤として政治倫理条例を再認識した。
(4) 課題
実際におこなって、例えば市民との意見交換会は議会報告会と意見交換の機能を併せ持つため時間不足の状況がある。政策討論会では全体会ではある程度の取り組みができたが、分科会と議会制度検討委員会の本格運営は今後の課題となる。
政策形成サイクルをきちんとおこなうためには、議員の研究調査能力の向上、議会事務局の適切な支援体制の整備、議員全員の共通認識の形成など必要な項目は多い。
(5) 質疑応答の内容
問)議会検討委員会の小会派の参加は?
答)30人の議員のうち2人以上の会派に所属する29人が参加した。
問)議会制度検討委員会の公募市民の状況は?
答)2人を公募し、1人が市民委員となった。
問)議会制度検討に対する80の意見の主なものは?
答)「あたりまえではないのか」「何で今までやらなかったのか」など。
問)先進市の条例を参考にする際の方針は?
答)項目として1つ1つおこなった。
問)意見交換会の班編成の工夫は?
答)会派、期別、地域を考慮して分けること。個人的な意見を言わないことが原則。
問)条例の第4条「会派を結成するものとする」となっているが義務規定は難しいのでは?
答)努力義務としている。
問)2条例への議員の賛否は?
答)議会基本条例は全員賛成。議員政治倫理条例は3人が反対した。
問)決定された政策は、市長部局との関係、予算との関連の実現性は?
答)予算を要しない種々の基本条例などを考えている。
問)党派との関係性は?
答)制度として議会不要論につながる現状から合議体として機能させることを重視。議決責任は重く捉えている。
問)意見交換会において議員による採決の賛否の違いによる問題点は?
答)回を重ねることによってチームとしての一体感が生まれ、フォローしあう状況が見られる。
問)分科会の費用は?
答)常任委員会視察を半減させて、講師費用に当てている。
問)行政側の変化は?
答)大きな変化は今後と考えている。ただし小学校移転の問題に対して、行政側を退席させて委員間討議をおこなうなどの変化はあった。
問)議会事務局の体制は?
答)議会事務局が中心となっておこなっている部分が多い。法務、財務、政策に明るい人材が存在する。
問)市民の捉え方、進み方はどうか?
答)これからの課題と認識している。
(4)考察
会津若松市の議会基本条例は、この条例自体をツールとして捉え、政策形成サイクルというこれまでと異なる議会の取組みを規定したところに大きな特徴がある。市民への説明責任、市民からの意見・要望の集約、議員同士の議論の活発化、議員の政策立案能力の向上等の議会に求められると判断した内容を、市民との意見交換会や政策討論会という形で具体的に実施することを定め、それを政策形成サイクルという一連の流れとして扱うことは、策定過程において学術的な研究を多く取り込んだ試みであることを示していると思われる。逆に具体的であるがために前文で「最も根幹となる支柱として、また、そのよって立つ基盤として」という記述はあるものの、先進自治体として大いに参考にされたという栗山町、伊賀市の議会基本条例に定められる「最高規範性」は条文には記されていない。このような地域性、住民の特性等による議会基本条例の多様性、幅広さは多く参考となると思われる。
議会基本条例の策定について、平成19年7月検討委員会設置から平成20年6月施行までの約1年間でおこなわれている。これは非常に短期間であるという印象を受ける。議会事務局、そしてフットワークを軽くするためにあえて特別委員会としなかったという検討委員会が精力的に策定に向けて努力されたことがうかがえる。ただし改選前の平成17年から、合併を契機としての議会改革、議会のルールの見直しはおこなわれており、申し送りが改選後の議会におこなわれていることを考えると、議会として共通な基盤を多く有していたことが良い条件となったと思われる。また条文策定において議会事務局の果たした役割は大きいということであったが、当市においても議会事務局の職員配置については非常に重要な要素であると考える。
会津若松市議会議員政治倫理条例については、主に策定の経過について説明があった。議会内の不祥事という特殊な状況から検討がはじまり、改選前に素案は完成していたという素早い対応であった。特殊な状況から議会基本条例よりもこの条例の必要性を共通に認識することが容易であったために策定への動き出しが早かったと考える。現在の会津若松市議会の政策形成サイクルへの取組みは、議員一人一人が議会という合議体を意識することで、倫理という単語が意味する「守るべき最低限の基準」を大きく超えた取組みであると思われる。
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