東村山市における農業、特産品、市民の食の安全に関する陳情
更新日:2020年11月30日
陳情趣旨
私たちは農業や食に関心を持つ一市民です。2017年頃から日本の農業、種苗の扱いなど状況が以前と変わってきたように感じます。主なものは、農業競争力強化支援法が2017年8月1日に施行されたこと、主要農作物種子法が2018年4月1日をもって廃止されたことです。そして2020年現在、国会で種子の自家採種を原則、一律禁止とする方向で種苗法の改正が議論されます。
主要農作物種子法は昭和27年(1952年)に制定され、私たち日本人の主食である米、麦、大豆の種子を、国民に飢えさせることのないように国が管理する法律でした。主要農作物種子法に則り、国と都道府県が主導して米、麦、大豆の主要農作物の種子の維持、開発、安価な価格で安定供給がなされ、日本人の食と農を支えてきました。我々がおいしいお米を100%自給できているのも、この法律のおかげでした。
2018年農業競争力強化支援法を制定した翌年、主要農作物種子法は、民間参入の妨げになるという理由により衆参両議院で合計わずか12時間の審議で採決され、廃止されました。廃止について専門家は、米などの種子が5倍から10倍へ価格高騰(現在も、民間企業の種子は公共種子の10倍)、種子の多様性が消滅し、国際的大企業による種子支配が進み、穀物を扱う大企業の種子のみが流通する可能性、遺伝子組み換え米の生産が進むなどの危険性を指摘しています。
主食である米や主要農作物の麦、大豆などの生産は農家や消費者にとって、民間の営利のためにあるのではなく、国民の生命や生活の維持のために存在すると考えます。米など主要農作物の安定供給や多品種維持は、民間企業の営利よりずっと大切なものと考えます。こうした意見は、農業協同組合、いくつかの道県や市町村、野党の国会議員、元農林水産大臣、その他多くの人たちの意見でもあります。
主要農作物種子法の廃止をうけ全国で動きがあり、2020年10月13日の時点で北海道、新潟県、埼玉県など22道県では主要農作物種子法に代わる条例を制定しており、3県が制定準備中、1県が知事表明を出しています。関東地方では東京都、神奈川県、山梨県を除き条例が制定されました。全国の市町村では種子保全の意見書を国に提出しています。東村山市では2018年に国へ意見書の提出を求める陳情書が不採択となりました。
また農業競争力強化支援法は、国が農業生産関連事業者に対して優遇する内容が多く消費者の立場からすると首を傾げる内容です。
農業競争力強化支援法第4条第2項、第8条第1項第3号及び第4号、第10条を読むと、国が農業生産関連事業者に対して資金提供を行い(第4条第2項)、農業資材(米の種子も含みます)を集約(数を少なく)し(第8条第1項第3号)、長年私たちの税金で作ってきた種子の知見を民間事業者に無料で提供し(第8条第1項第4号)そして第10条により、国は農業生産関連事業者の情報を安易に入手するための措置(つまりに農業関係者へ農業関連事業者の宣伝)を行うのです。
2020年国会で審議される種苗法改正案では、農家による種子の自家採種・自家増殖の原則禁止が組み込まれており、これが決まると、自家増殖による栽培が一般的なイチゴ、サトウキビ、イモ類、果樹類の一部の自家増殖について育成者権者の許諾が必要になります。許諾には当然、使用料の支払いが発生するので農家の収入に大きく影響します。
タネには大きく分けて2つあり、「登録品種」は種子企業などが品種を開発して申請し登録したもの、一般品種とも言われる「在来種」は昔から日本にある品種で、品種登録がされたことがない品種、登録切れの品種を指しています。在来種を保護する法律はありません。
自家採種・自家増殖が禁止され許諾が必要な登録品種は、2016年まで82種だったものが2019年3月には387種に増えました。農水省が「極めて特別な品種です」といった登録品種は年々増加しています。種苗法が改正され登録品種と知らずに自家採種・自家増殖すれば、10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金、法人においては3億円以下の罰金、共謀罪の罪にも問われます。
さらに農家は毎年、米、麦、大豆について農業企業から種子を買わなければいけないことになっていきます。在来種は自家採種可能ですが前述のように在来種を保護する法律はなく、企業が開発した種子と在来種の種子の厳密な区別がつきにくいため大企業に有利に進みやすく、農家の自家採種は狭まっていき、大企業の種子を買うしかない状況に至ると有識者は指摘しています。大企業とは、海外に拠点をもつ多国籍企業であり、日本の農業と食の多国籍企業支配が進みます。
こうした状況は、農業や食品が公共の手で守られる道から、企業の営利に支配される道へと向かっているように思えてなりません。南米のいくつかの国では企業による食の支配が進んだ結果、家族農家は隅に追いやられ、食の選択肢が奪われました。日本でも同じ道を辿る可能性があります。
遺伝子組み換えやゲノム編集された種子しか売られず、他に選択肢がなければ農家はそれを育てるしかなくなります。それらは大抵、使用する量も契約で決められている農薬とセットで売られ、勝手に使用量を減らせば多額の違約金を支払うことになります。農薬漬けになった土が使えなくなり農家が廃業すれば、企業がその土地を買い上げ、遺伝子組み換え作物を作る可能性があります。例えば企業の特許がついた遺伝子組み換え種子(登録品種)の花粉が拡散し、着地した別の畑で勝手に芽吹いたとしても、後日企業により「知的財産権を侵害した」として訴訟され敗訴にまで至っている事例が海外ではすでに500件以上もあります。日本では2018年、しいたけの育成者権を侵害したとして訴訟が起きています。国土の小さな日本で、登録品種が在来種と交雑し、登録品種に形状や特質が似る可能性、またその土地や環境に対応し年々変化していく種子が登録品種に似てしまうこともあり得ます。DNA鑑定では在来種か登録品種かは判別できず、その判断は農水省が『特性表』というリストをもとに人的能力で見分けるというのです。訴訟になれば大資本を持つ企業と一農家ではどちらが有利かは明白でしょう。
農業競争力強化支援法が施行され種子法が廃止される以前、元々の種苗法は開発者、農民の双方の権利をバランスよく保護していました。しかし種苗法が改正されればそのバランスは崩れ、一気に開発者側が有利となります。
一市民として、日本政府がなぜそこまで、多国籍大企業を含む農業関連事業者に不公平に力を貸すのか理解できません。この法律の下に今後の日本の農業と食に多大な影響力を持つようになっていくのは安易に想像できます。企業は、営利を目的とした経済活動を行うものです。国民の生活の安定や福祉より、営利を追求する可能性があると推測できます。もしも種子の多様性が認められない状態で、企業側から売られる種子が異常気象に耐えうるものではなく、それしか植えられないのであれば、私たちが飢えに苦しむことにもなりかねません。
生きることは食べること。食料とそれを生産する農業は、人間生活に必要不可欠なものであり、なくすことはできません。タネはいのちそのものです。品質の良いタネであれば分け合い育てることで、農法や農地が脈々と継承されてきました。
それが公的に支えられ、安全なものを、安心して、十分食べられる状況を守ることは、国民の基本的人権であり、農民主権、食料主権です。
しかし国は都道府県、市町村それぞれの気候風土や特産品、事情を考慮した法律の制定は難しいと思われます。東村山市の特産品である地酒や梨、ぶどうやキウイなどの他、スーパーや給食に卸されている地場野菜も決して無関係とは言えません。
もし種苗法が改定された結果、遺伝子組み換え作物、ゲノム編集作物が市場を大きく占めることになれば、子どもたちも無関係ではありません。子どもたち自身が考え声をあげる機会は少なく、給食を含め食に関わる環境を子どもは選べないのです。そのことを鑑みれば私たち大人の責任は大きく、将来を見据えた選択が必要であると考えます。私たち大人が子どもの食の安全を守り子どもの未来を作るのです。
一市民としてこうした現在の状況に危惧を覚えるとともに、これらの件は農家の生産、市民の食生活に多大な影響を与えるため、市議会議員の方々に知見を深めていただきたく、次の事項について陳情いたします。
主要農作物種子法は昭和27年(1952年)に制定され、私たち日本人の主食である米、麦、大豆の種子を、国民に飢えさせることのないように国が管理する法律でした。主要農作物種子法に則り、国と都道府県が主導して米、麦、大豆の主要農作物の種子の維持、開発、安価な価格で安定供給がなされ、日本人の食と農を支えてきました。我々がおいしいお米を100%自給できているのも、この法律のおかげでした。
2018年農業競争力強化支援法を制定した翌年、主要農作物種子法は、民間参入の妨げになるという理由により衆参両議院で合計わずか12時間の審議で採決され、廃止されました。廃止について専門家は、米などの種子が5倍から10倍へ価格高騰(現在も、民間企業の種子は公共種子の10倍)、種子の多様性が消滅し、国際的大企業による種子支配が進み、穀物を扱う大企業の種子のみが流通する可能性、遺伝子組み換え米の生産が進むなどの危険性を指摘しています。
主食である米や主要農作物の麦、大豆などの生産は農家や消費者にとって、民間の営利のためにあるのではなく、国民の生命や生活の維持のために存在すると考えます。米など主要農作物の安定供給や多品種維持は、民間企業の営利よりずっと大切なものと考えます。こうした意見は、農業協同組合、いくつかの道県や市町村、野党の国会議員、元農林水産大臣、その他多くの人たちの意見でもあります。
主要農作物種子法の廃止をうけ全国で動きがあり、2020年10月13日の時点で北海道、新潟県、埼玉県など22道県では主要農作物種子法に代わる条例を制定しており、3県が制定準備中、1県が知事表明を出しています。関東地方では東京都、神奈川県、山梨県を除き条例が制定されました。全国の市町村では種子保全の意見書を国に提出しています。東村山市では2018年に国へ意見書の提出を求める陳情書が不採択となりました。
また農業競争力強化支援法は、国が農業生産関連事業者に対して優遇する内容が多く消費者の立場からすると首を傾げる内容です。
農業競争力強化支援法第4条第2項、第8条第1項第3号及び第4号、第10条を読むと、国が農業生産関連事業者に対して資金提供を行い(第4条第2項)、農業資材(米の種子も含みます)を集約(数を少なく)し(第8条第1項第3号)、長年私たちの税金で作ってきた種子の知見を民間事業者に無料で提供し(第8条第1項第4号)そして第10条により、国は農業生産関連事業者の情報を安易に入手するための措置(つまりに農業関係者へ農業関連事業者の宣伝)を行うのです。
2020年国会で審議される種苗法改正案では、農家による種子の自家採種・自家増殖の原則禁止が組み込まれており、これが決まると、自家増殖による栽培が一般的なイチゴ、サトウキビ、イモ類、果樹類の一部の自家増殖について育成者権者の許諾が必要になります。許諾には当然、使用料の支払いが発生するので農家の収入に大きく影響します。
タネには大きく分けて2つあり、「登録品種」は種子企業などが品種を開発して申請し登録したもの、一般品種とも言われる「在来種」は昔から日本にある品種で、品種登録がされたことがない品種、登録切れの品種を指しています。在来種を保護する法律はありません。
自家採種・自家増殖が禁止され許諾が必要な登録品種は、2016年まで82種だったものが2019年3月には387種に増えました。農水省が「極めて特別な品種です」といった登録品種は年々増加しています。種苗法が改正され登録品種と知らずに自家採種・自家増殖すれば、10年以下の懲役、1,000万円以下の罰金、法人においては3億円以下の罰金、共謀罪の罪にも問われます。
さらに農家は毎年、米、麦、大豆について農業企業から種子を買わなければいけないことになっていきます。在来種は自家採種可能ですが前述のように在来種を保護する法律はなく、企業が開発した種子と在来種の種子の厳密な区別がつきにくいため大企業に有利に進みやすく、農家の自家採種は狭まっていき、大企業の種子を買うしかない状況に至ると有識者は指摘しています。大企業とは、海外に拠点をもつ多国籍企業であり、日本の農業と食の多国籍企業支配が進みます。
こうした状況は、農業や食品が公共の手で守られる道から、企業の営利に支配される道へと向かっているように思えてなりません。南米のいくつかの国では企業による食の支配が進んだ結果、家族農家は隅に追いやられ、食の選択肢が奪われました。日本でも同じ道を辿る可能性があります。
遺伝子組み換えやゲノム編集された種子しか売られず、他に選択肢がなければ農家はそれを育てるしかなくなります。それらは大抵、使用する量も契約で決められている農薬とセットで売られ、勝手に使用量を減らせば多額の違約金を支払うことになります。農薬漬けになった土が使えなくなり農家が廃業すれば、企業がその土地を買い上げ、遺伝子組み換え作物を作る可能性があります。例えば企業の特許がついた遺伝子組み換え種子(登録品種)の花粉が拡散し、着地した別の畑で勝手に芽吹いたとしても、後日企業により「知的財産権を侵害した」として訴訟され敗訴にまで至っている事例が海外ではすでに500件以上もあります。日本では2018年、しいたけの育成者権を侵害したとして訴訟が起きています。国土の小さな日本で、登録品種が在来種と交雑し、登録品種に形状や特質が似る可能性、またその土地や環境に対応し年々変化していく種子が登録品種に似てしまうこともあり得ます。DNA鑑定では在来種か登録品種かは判別できず、その判断は農水省が『特性表』というリストをもとに人的能力で見分けるというのです。訴訟になれば大資本を持つ企業と一農家ではどちらが有利かは明白でしょう。
農業競争力強化支援法が施行され種子法が廃止される以前、元々の種苗法は開発者、農民の双方の権利をバランスよく保護していました。しかし種苗法が改正されればそのバランスは崩れ、一気に開発者側が有利となります。
一市民として、日本政府がなぜそこまで、多国籍大企業を含む農業関連事業者に不公平に力を貸すのか理解できません。この法律の下に今後の日本の農業と食に多大な影響力を持つようになっていくのは安易に想像できます。企業は、営利を目的とした経済活動を行うものです。国民の生活の安定や福祉より、営利を追求する可能性があると推測できます。もしも種子の多様性が認められない状態で、企業側から売られる種子が異常気象に耐えうるものではなく、それしか植えられないのであれば、私たちが飢えに苦しむことにもなりかねません。
生きることは食べること。食料とそれを生産する農業は、人間生活に必要不可欠なものであり、なくすことはできません。タネはいのちそのものです。品質の良いタネであれば分け合い育てることで、農法や農地が脈々と継承されてきました。
それが公的に支えられ、安全なものを、安心して、十分食べられる状況を守ることは、国民の基本的人権であり、農民主権、食料主権です。
しかし国は都道府県、市町村それぞれの気候風土や特産品、事情を考慮した法律の制定は難しいと思われます。東村山市の特産品である地酒や梨、ぶどうやキウイなどの他、スーパーや給食に卸されている地場野菜も決して無関係とは言えません。
もし種苗法が改定された結果、遺伝子組み換え作物、ゲノム編集作物が市場を大きく占めることになれば、子どもたちも無関係ではありません。子どもたち自身が考え声をあげる機会は少なく、給食を含め食に関わる環境を子どもは選べないのです。そのことを鑑みれば私たち大人の責任は大きく、将来を見据えた選択が必要であると考えます。私たち大人が子どもの食の安全を守り子どもの未来を作るのです。
一市民としてこうした現在の状況に危惧を覚えるとともに、これらの件は農家の生産、市民の食生活に多大な影響を与えるため、市議会議員の方々に知見を深めていただきたく、次の事項について陳情いたします。
陳情事項
・市と市議会が協力し「持続可能な農業」「生物多様性と農業」など、食と農業に関する価値観を共有できる機会を積極的に設けること。
・農業関係者及び市民に対し農業に関わる法律の改正など適切な情報提供を行い、共有できるよう仕組みを作り、意見交換の場などを設け、市民の知る権利を尊重すること。
令和2年11月13日
このページに関するお問い合わせ
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